◆そもそも労災保険とは?
仕事中や通勤中での災害に対して、その災害で被ったケガや病気に対して、補償するための保険です。
「療養補償給付」「休業補償給付」「障がい補償給付」「遺族補償給付」の4つ補償があります。
従業員を一人でも雇用したら強制加入である「政府労災」に対して、保険会社が販売している保険を「任意労災」と呼びます。
この2つの労災保険の特徴や加入条件など、比較しながら解説していきたいと思います。
◆政府労災
「政府労災」と「任意労災」を混同されている方も多いですが、正式に労災と認められるものは政府労災のみです。
しかし、建設現場では労災と呼ばれる保険は、「政府労災」「任意労災」の2種類あるので、労災の加入有無を聞かれたら、どちらの労災か確認をして下さい。
また、「雇用契約」を結んでいる従業員は、政府労災への加入が義務となっています。
一方で、一人親方や法人役員の方は、雇用契約上での仕事ではないので、労災保険の対象外となります。
しかし、「特別加入制度」を利用する事で、加入する事も叶います。
この特別加入制度は、組合費を支払い組合に加入する事で、組合を通して手続きする事が出来ます。
※組合により組合費が異なりますので、どこの組合に所属するのか吟味してください。
・一人親方の場合
建設業組合に加入するのが一般的なパターンですが、近年は特別加入制度だけに特化した組合もあり、特別加入の為だけに組合に加入する場合は、そちらの方が割安となる場合も多いです。
・法人役員の場合
「中小企業主の特別加入」として加入する必要があります。
労働保険事務組合で手続きを行う流れとなりますが、この加入手続きは煩雑な手続きとなっているため、社会保険労務士等に代行してもう方も多いです。
◆通常加入か特別加入制度かで補償対象は変わる?
・雇われている場合
勤務先への通勤や雇用契約に基づく仕事をしている最中に、仕事が原因で被ったケガや疾病は業務災害と認められます。
勤務中に仕事に関係ない作業をしたことにあるケガや、故意に怪我をした場合等は業務災害になりません。
・一人親方の場合
一人親方の場合、雇用契約の元で働くわけではなく、請負契約の元で働きます。
一人親方の場合で業務災害と認められるためには、下記の条件のいずれかを満たす必要があります。
1.請負契約に直接必要な行為を行う場合
2.請負工事現場における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
3.請負契約に基づくものである事が明らかな作業を自家内作業場において行う場合
4.請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具程度のものを除く)及びこれに直接附帯する行為を行う場合
5.突発事故(台風・火災等)により予定外の緊急の出勤を行う場合
◆任意労災
任意労災には2つの目的があります。
・起業防衛
政府労災でカバーされない「賠償責任」や「慰謝料」等をカバーしてくれます。
大きな額になりがちな慰謝料や賠償金を補償してくれるので、企業にとっては加入する事は大きなメリットとなります。
・上乗せ補償
政府労災の補償額は加入者の賃金がベースで、いざという時の補償額が低くなっています。
万が一、怪我をして休業してしまった場合、1日あたりの休業補償額は日額の6割で、安心して療養出来る水準にありません。
この様なケースに対応するため、政府労災の上乗せという形で、任意労災があります。
◆現場に入るのに労災保険の加入が必須?
作業現場に入るのに労災の加入が義務付けられているケースが一般的です。
具体的な条件が提示されない事も多いので、政府労災じゃないあといけないか、任意労災の保険でも良いのか、どちらも加入しているかなのか、元請会社に確認をするようにしましょう。
任意労災だけで良いと思って受注したら政府労災の事だった、というトラブルも意外と多く聞くので注意が必要です。