産業廃棄物の中でも、建設業者から排出される「建設廃棄物」は、排出量や最終処分量に占める割合が高く、不法投棄も多かったりするため、大きな問題として捉えられています。
また、建設廃棄物の排出量の低減はもちろんのこと、リサイクル率の向上も重要視されています。
本記事では、「建設廃棄物」と「建設副産物」の違いや、リサイクルや処理の課題について、ご紹介していこうかと思います。
・建設廃棄物と建設副産物
「建設廃棄物」は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の両者を含む廃棄物です。
「建設副産物」は「建設廃棄物」のほか「再利用できる資源」も含まれます。
・建設廃棄物における過去と現状
2000年には、「建設リサイクル法」と呼ばれる法律が施行され、建設廃棄物の適正な分別や再資源化が促進されました。
建設リサイクル法では、特定建築資材の分別解体や再資源化などが義務付けられ、工事着手7日前までに都道府県知事に届け出る等、細かいルールが定められました。
その結果、建設廃棄物は大幅に減少し、リサイクルも重要視され始めました。
2008年度以降は、建設廃棄物の排出量は増加傾向にありますが、最終処分量は減少傾向である事が分かります。
2018年度以降は、建設廃棄物のリサイクル率は97.2%と高い割合を誇り、資源の有効活用が進んでいます。
・リサイクル率
2018年度の建設廃棄物のリサイクル率は、約97%と非常に高い結果になりました。
また、国土交通省が公表する「建設リサイクル推進計画2020」では、品目別は以下の様に報告されました。
どの項目も高い再資源化率を実現している中で、「建設混合廃棄物」だけは低い水準となっています。
建設混合廃棄物とは、瓦礫類・廃プラスチック類・金属屑・ガラス屑・陶磁器屑・ゴム屑などの安定型産業廃棄物と、木くず・紙くずなどの廃棄物が一つに混在している廃棄物の事です。
混合廃棄物は単品の廃棄物と比べると、排出から再資源化までの過程が増えてしまうので、再資源化に繋がりにくいと考えられています。
・今後の取り組み
リサイクルについては既に97%と高い水準で取り組めております。
国土交通省は建設リサイクル推進計画2020の中で、”安定期に入った建設廃棄物のリサイクルは、今後は量より質を重要視する”としています。
その為に新たに以下の3つの施策を挙げ、目標達成のために進められている最中です。
1 廃プラスチックの分別・リサイクルの推進
2 リサイクルの原則化ルールの改定
3 建設発生土のトレーサビリティシステムの活用
この3つの施策は以下で詳しく解説していきます。
①廃プラスチックの分別・リサイクルの推進
廃プラスチック建材の排出量は、2017年時点で約62万トンとなっていますが、分野別にみると4番目に多い排出量となっています。
一方で、2018年の「建設副産物実態調査」によると、廃プラスチックの排出量のうち約3割である、約18万トンが最終処分されています。
この様に再資源化が進んでいない現状を鑑みても、プラスチックの削減は重要な課題となります。
廃プラスチックは民間が主体となる建設工事から搬出される事から、最終処分の削減には民間企業と産業廃棄物処理業者で、密な連携が重要となってくるでしょう。
②リサイクル原則化ルールの改定
建設副産物の発生抑制への対策を具体的に検討出来るよう、距離制限や搬出先(再資源化施設)の指定等、リサイクル原則化ルールの改定が検討されています。
③建設発生土のトレーサビリティシステムの活用
建設発生土は、発生元から最終的な搬出先までに、多数の受入地や業者を経由します。
この移動の実態把握が困難であったため、不適切な取り扱いに繋がっていました。
このため、ICT技術の活用により発生元から搬入先までの経路を正確に把握する、トレーサビリティシステムの導入が重要視されています。
・まとめ
2000年に施行された建設リサイクル法により、建設廃棄物のリサイクルが急速に進み、2018年時点でリサイクル率97%と、非常に高い数値を誇っています。
国土交通省は「建設リサイクル推進計画2020」で、建設廃棄物のリサイクル率は安定期に入り、今後は質の向上を課題に掲げています。
天然資源の消費を抑えて環境負荷を軽減させる事で、深刻化している環境問題の改善へも繋がります。
各社が高い意識を持って産業廃棄物の削減やリサイクルに取り組む事で、より良い社会へと繋がるのではないでしょうか。
節電やCO2削減等の環境問題取り組むのと同じように、当事者意識を持つことが大切となりますね。